アパート・マンションなどの賃貸住宅の家賃は、4m道路に面した三角形の土地に建てた場合と、6m道路に面して、土地の形が四角の整形地に建てた場合でも、同一地域・同一間取りならば賃料は変わりません。
それならば、4m道路で三角形の土地は、6m道路で整形の土地よりも土地価格が安いのだから、条件の悪い土地を買ってアパートを建てたほうが総額が安くあがり利益が増えるのだから、そうしなさいと言う訳です。
この言葉、ある意味では正解ですが、こんな場合は当てはまりません。
私の知っている地主さんの、こんなケースがあります。
土地を複数所有しているこの地主さん、ある時固定資産税の重みに、マンション建設を思い立ち、どうしたら良いか知り合いの建設会社に相談したところ、こんな提案を受けました。
数ヶ所持っている土地で、条件の一番悪い土地を売って自己資金を作り、条件の一番良い土地に一階店舗、二階以上が賃貸住宅のマンションを建てる。
この計画に乗り、早速土地を売り出しましたが、条件の劣る土地ですからなかなか売れません。
そうこうしているうちに、マンションの建設計画を聞きつけた大手ゼネコンが、あとから営業で割って入ってきました。
「アパート・マンションは、条件の悪い土地に建てろ。」という言葉があるのをご存知ですか。
条件の一番良い土地に居住用の賃貸マンションを建てるなんて、もったいない。条件の良い土地は、今までどおり駐車場にしておいて、お子様に更地として残しましょう。
将来、マンション以外の用途が見込めます。
そして条件の一番悪い土地にマンション建てましょう、家賃は変わりません。
ローンは自己資金を出さなくても、当社がお世話します。
結果は、あとから入ってきたゼネコンの勝ち。
そりゃ、そうでしょうねえ。
土地所有者からすれば、条件の悪い土地の活用方法を提案してくれて、しかも自己資金は全額ローンをあっせんしてくれるので必要ない。
未来の相続人である子供たちも、条件の良い土地を更地で残してくれる。
相続後売って売買代金を分けても良いし、分筆(分割)も、マンションと違って更地なら容易です。
それでこの計画、机上では誠に良い訳ですが、それから何年かして、私がこの地主さんの相談に乗る事になりました。
条件の悪いほうに建てたマンションの入居率が悪く、自己資金を入れずに全額ローンを組んだのでローンが苦しくなった。
入居者の入らないマンションなんて要らないと、建てたマンションを売りに出しているが、売れないのでどうしたら良いか、といったものでした。
実は私はこのマンションに、計画段階も入居あっせんでも関与していません。
別の業者がやっていたのですが、建てても入居者は入らず、入らないから売ろうとしたらマンション売却も出来ずで、仲がこじれてこれ以上その業者に相談したくない、今後どうしたら良いかと、知人を通じ相談に乗ってもらえないかと話しがあったものです。
結論から言うと、この地主さん、本来残しておきたかった条件の一番良い土地である駐車場を売却し、入居率の悪いマンションのローンを一部繰上げ返済することになりました。
マンション売却は、ローン残債からとても出来そうに無かったのです。
「アパート・マンションは、条件の悪い土地に建てろ。」確かにある意味正解ですが、この言葉、もともと家主優位の時代に当てはまっていた言葉で、賃貸住宅のだぶついている現状では必ずしもそうではありません。
条件が悪いといっても限度があります。
建てれば入った時代は、とっくの昔に過ぎています。
甘いささやきには、ご用心。