質問
10年ほど前から母が中古アパートの経営をしています。
娘である私が途中空いた一室に入居しています。
大家の娘であると言うことから、何かあるとすぐに私の方に苦情(修理の依頼)がきていました。
そんな中でも窓口になりながら他の住人の方たちとも仲良くやってきていました。
しかし、昨年10年来住まわれていた1階の方が引っ越され、それにしたがい補修・交換などを行いかなり綺麗になった状態で、しかも築年数から家賃をたたかれ値下げしての新しい方の入居となりました。
そのことが原因かどうかはわかりませんが、2階に住む方が更新の折家賃の値下げを交渉してきました。
母としては、長年住んでもらっているのだから、値下げではなく、追い炊きの機能のついた給湯器に交換しましょう!と言ったのですが、「そんなことよりも家賃を下げろ!」との返事に、しかたなく3000円の値下げを承知したのですが、「管理費込みで!(計5000円のねさげを要求してきました)」
結局、5000円の値下げということでその場は終わったのですが、その後すぐに「排水が悪いので高圧洗浄をかけてくれ!」と言ってくる、次は昨年夏から屋根裏にコウモリが巣をつくり昨年は消毒業者に頼み清掃消毒をしたのですが、「今年もまた来ている!糞尿でダニが湧くと困るから清掃消毒をしてそれを証明しろ!!」と。
そして、またまた今度は「給湯器の調子が悪い!」と。
ガス会社に実に来てもらった時には「たまたまきちんと作動した。」ということだった。
年式も15年ほど前のものなので変えどきなのかもしれないが、あまりにも我がまま放題勝手放題の言われようにいい加減腹もたちどうしたものかと頭を悩ませています。
「気にいらないなら出て行け!」と言いたいのですが、そういう訳にもいかず、こんな場合、どう対処したらよいのでしょうか?
管理会社の方は入居者寄りな感じも受けます。
どうかご意見を聞かせてください。
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回答
前回に引き続き、賃貸住宅の大家さんからの質問を、取り上げてみました。
これが、大家さんと入居者の立場の違いでしょうね。
大家さんとしては「家賃も要求に応じて下げている。古いんだから多少は我慢してくれ。」と思っていて、
一方入居者は、「多少家賃を下げてもらったって言っても、タダで借りているわけじゃ無い。だいいち古いんだから安いのは当たり前。周りの賃貸に比べて安いのならともかく、同じくらいのに比べたら同じか、かえって高いくらいだ。」と思っているわけです。(爆)
なぜこんなに意識に差が出るのか?
不動産やっていると分かりますが、大家にとっては今までの家賃が、知らないうちに定価になっているんですね。
誰が決めたわけでもない家賃が、いつの間にか大家さんの意識の中では定価になっていて、それを値下げした事が、ものすごいディスカウントで、大損したように思っているわけです。
しかしねえ、根拠無く家賃の引き下げに応じる、大家さんは居ません。
入居者募集が何ヶ月も決まらなかったり、近所の賃貸が大幅に家賃を下げている事を知ったりして、引き下げに応じているわけです。
であれば、今はその家賃が、定価なのです。
その定価で借りている入居者に、普通に暮らせる住環境を提供するのは、家主として当然の努めであり、義務でもあります。
私に言わせてもらうと、その管理会社は入居者寄りなのではなく、大家さん側の肩を持っていないだけで中立です。(爆)
しかしそうは言っても、お気持ちは分かりますよ。
家賃は下がる、修繕費はかかる。
建てた当時はこの調子でいけば、やがては左うちわの大家さんと思っていたものが、当てが外れるのですから。
修繕維持管理費の上昇、空室率の増加、家賃が上昇しない限り、アパート経営は年とともに収益が悪化します。
手取りがドンドン少なくなっているところに、入居者からあれしてくれこれしてくれと言われる。
それでは頭にもくるのも、気持ち的には分からないでもありません。
でもそれが現実ですから、これを受け入れていかなければいけません、なのになぜその事を受け入れられないのか?
大きな原因は、ずばり申し上げて2つです。
1.現状把握・現状の分析が、出来ていない。
2.経営方針が定まっていない。
まず「現状把握が出来ていない」からですが、大家さんの大半は、ご自分が持っているアパートマンションが、周辺同程度の賃貸住宅に比べ、安いのか高いのか分かっていません。(爆)
はっきりと、自分が持っている、このアパートの適正家賃は、何万何千円だ。
今この部屋はいくらで貸しているから、相場より何千円安く貸している、とか、高く貸しているなどと、即答できる大家さんは、ほぼ皆無です。
そんな事知らなくても出来たのが、今まで不動産経営のいいところだったのですが、今後はそうもいきません。
ちなみに不動産会社で賃貸物件を持っているところは、上記の質問に当然ですが即答できます。
建てて10年以上経つなら、せめて入居者の入れ替わりの時だけでも。周辺の賃貸住宅に比べ、競争力があるのか、相場から外れて高くないのか安すぎることは無いのか、調べる事をお勧めします。
現状把握がしっかり出来ていれば、ご質問のクレームにも冷静に対応する事が出来るはずです。
すなわち、周辺相場よりも高く入居してもらっているのなら、これは退去されては大変だから、出来るものなら要望にこたえなくてはいけないでしょうし、相場くらいで入居してもらっているなら、要求の妥当性を検討しての対応になるでしょう。
そして周辺に比べ、安い家賃で入居しているにもかかわらず、文句ばかり言ってくるような入居者なら、要求には応じず「嫌なら退去して下さい。」と対応すればよいと思います。(爆)
もっとも「給湯器の交換」などは、入居者のためでもありますが、一方、賃貸住宅の価値を高める行為でもあるので、大家であるご自身のためでもあります。(ここらあたりを、ごちゃ混ぜにして、よく理解していない大家さんも多いのですが。)
ご質問の方は、ただなんとなく高いのかな?くらいの認識で、今でも御自分(親御さんの)のアパートの、適正家賃が何万何千円とはっきり分かっていないはずです。
早急に、高いのか安いのか、相場なのかを把握して下さい、
そうすれば、対処方法も自然に分かるはずです。
次に「経営方針が定まっていない」ですが、これも大事です。
周辺同程度のアパートマンションに比べ、維持管理の状態を高く保ち、高く貸す。
あるいは手入れは、最低限やらないといけないことしか行なわない。その代わり家賃は、ほとんど周りには無いくらい安い。
はたまた、家賃もサービスも周りに合わせる。その代わり、周りがどの程度建物に手を入れているのか、常に気を配っておく。
どの方向で経営していくのかは、どれが正解で、どれが間違いということもありませんので、どれでも良いのですが、方針を決めておきそれを管理会社に伝えておくことは大事なことです。
「うちのアパートはこんな人に入ってもらって、こんなふうに経営していくつもりです。」と。
他にもやることはありますが、長くなるのでこれくらいで。(爆)